第3章.蔓無源氏ができるまで
第3章.蔓無源氏ができるまで
平成15年8月に植え付けが始まった「蔓無源氏」ですが、栽培している農家もなく、現在栽培されている品種のさつまいもに比べ育てにくいことから、農家の谷山さんにとっても非常に苦労があったようです。谷山さんの話では、同じ畝に、「蔓無源氏」と「コガネセンガン」を植えると、栄養分は全て「コガネセンガン」が吸い取って、「蔓無源氏」が全く育たないということでした。それだけ「蔓無源氏」は、現在の品種に比べて、栽培しにくい芋だということです。
平成15年の暮れに初めて、「蔓無源氏」が収穫されました。とはいっても、10本の苗からの収穫量なので、ほんの数キロの収穫でした。これらの芋は全て種芋に回し、翌年(平成16年)に、この種芋から出た苗を全て植え付けして、同年の暮れに2回目の収穫をしました。この2回目に収穫された芋も、全て種芋に回しました。そして3年目の植え付けとなる平成17年には、種芋の量も増え、この年の秋の収穫時には、3.5トンほど収穫することができました。これで、ようやく仕込みができるようになりました。
はじめての仕込みは、平成17年11月21日でした。「蔓無源氏」は、皮の赤い芋で、入荷時は当然赤くしているのですが、べにあずま・なると金時などの赤芋と違い、芋洗い機で洗うだけで、表面の赤い皮の部分が一部はがれ落ち、赤と黄色のまだら状態になりました。



収穫された「蔓無源氏」
 
ただ、この「蔓無源氏」という芋ですが、ふかしてみると、少し驚いたことがありました。一般に普通の芋は中が黄色いのですが、この芋は少しオレンジ色っぽいような黄色をしていて、コガネセンガンなどとは違い、ねっとりとしていました。これを口にしてみると、とても甘みの強いのにびっくりしました。この時に、この芋は普通の芋とは違うのを感じました。
仕込んでから、「大正の一滴」同様、20日ぐらいかけてもろみを発酵させました。もろみも、少しオレンジ色っぽくなり、独特の甘い香りが漂うもろみです。そして、いよいよ、平成17年12月9日に、初めての蒸留が行われ、芋焼酎「蔓無源氏」が誕生しました。
この独特の甘い香りは、出来上がった焼酎にも、移ってきました。蒸留直後なので、当然ガス臭も強いのですが、コガネセンガンを使った「大正の一滴」とは違う風味を感じました。